レコード復活を支える「RECORD STORE DAY」、米国で73万枚突破の偉業

WRITER
ジェイ・コウガミ

73万3000枚。

これは、全世界で年に一度開催されるレコード好きとレコード店のためのアナログレコード祭「RECORD STORE DAY」が開催された4月21日の週に売れたレコードの枚数だ。

正確な説明をすると、アメリカ国内で4月20日から4月26日の7日間に購入されたレコードの数。その1週間前のレコード購入枚数は25万3000枚だったので、190%売上が増えたこととなる。

73万3000枚という数字はRECORD STORE DAYが始まった2007年以降の開催週間売上の最高記録だそうだ。アメリカでの週間レコード売上記録は、2017年12月15日〜21日週が記録した81万1000枚。次いで2015年12月18日〜24日週の75万3000枚で、今年は歴代3位の記録だ。改めてレコード人気とRECORD STORE DAYの影響力に圧倒される。

そしてこのイベントがレコード好きに愛される理由の1つに、レコードストアに足を運ぶ体験だ。日本でも多くのファンが4月21日にはレコードストアへ向かったり、中にははしご人も多いはずだ。その結果として、アメリカでは購入された合計73万3000枚の内、58万枚が独立系レコードストアで購入された。これほどまでに大勢の音楽好きをストアへと向かわせるほど、レコード人気においてレコードストアの存在は魅力的なのだ。

最もアメリカで買われたLPを見てみよう。今年のRECORD STORE DAYで人気1位だったのは、ブルース・スプリングスティーンの5000万枚限定『グレイテスト・ヒッツ』。2位はデヴィッド・ボウイの『Welcome to the Blackout (Live London ’78) 』、3位はニール・ヤングの『ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト(今宵その夜)』だ。偶然にも3人とも1940年代生まれのロックミュージシャンという共通点がある。

ほとんどの人が音楽をオンラインで聴くようになった世界では、SpotifyやApple Musicのような音楽ストリーミングサービスが最も人気だ。先日、世界の音楽業界の代表的な組織「国際レコード産業連盟」(IFPI)が2017年の世界の音楽市場の売上データを発表したが、音楽ストリーミングからの音楽売上は全体の39%を占めて、売上でCDとダウンロードを初めて上回った歴史的な発表が衝撃を与えた。

その一方、世界ではCDなどのフィジカルアルバムの購入や、音楽ダウンロードでの楽曲視聴は年々減っている。IFPIによれば、2017年にフィジカル音楽は5.4%、音楽ダウンロードは20.5%も売上が前年から減った。

また、音楽を販売する量販店ビジネスも不況だ。アメリカでは大型チェーンストアのBest BuyやTargetがCD販売の縮小を計画している。

しかしストリーミングが一人勝ちし始めたこうした状況で、レコード売上は好調。2017年には全世界で売上が22.3%も増えるほど、勢いは衰えを知らない。

アメリカでもCD離れ、ダウンロード離れが進み、音楽ストリーミングで音楽を聴く人が増える中で、今だにレコード人気の復活は、売上10%の伸びを記録するほど顕著に現れている。レコード人気は、いまやアメリカ音楽業界でも注目を集めるほどだ。

日本でも「レコード人気」「アナログ復権」そう呼ばれて久しいが、近年は音楽ビジネスとしての復活劇にも注目が高まっている。特に、音楽の物理的な店舗販売が減り、音楽消費がオンラインやスマホに移行する中で、レコードのような物理メディアがデジタルネイティブな若者たちに人気とする見方はよく目にする。

だが見逃されがちなのは、レコードストアのオーナーたちの存在だ。レコード市場の人気復活を支えているレコードストアのアティチュードや取り組みが話題になることは少ない。前述のRECORD STORE DAYも発端はレコードストアのオーナーたちによって始まったものだ。

レコードのファンが増えている背景には、独立系レコードストアと根強い愛好家たちの存在がある。「ストアに足を運びたくなる」アットホームな購買体験が大事に育み、多くの熱心な音楽ファンを魅了し続けることで、音楽への新たな需要を取り込んでいるのだ。ビジネスのシェアは小さいながらも、アメリカではレコードストアのオーナーたちが活気に溢れているという話をよく耳にする。

Third Man Pressing

そして精力的なのはファンやレコードストアだけにとどまらない。レコードを製造するプレス工場も復活しつつある。ミシガン州デトロイトには2017年に新たにアナログのプレス工場ができた。オーナーは、元White Stripesのギタリストでロックミュージシャンのジャック・ホワイトが主宰するレーベル「Third Man Records」だ。テキサス州オースティンには、100枚からのオーダーをわずか4週間で製造するプレス工場が生まれた。こうしたレコードビジネスの復活も、RECORD STORE DAYの影響があることを見逃すことはできないだろう。

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)

ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、「All Digital Music」編集長)
世界の音楽テクノロジーやビジネス、音楽業界のトレンドに特化した取材・執筆・リサーチ活動を行う音楽ビジネスメディア「All Digital Music」編集長を務める。海外の音楽カンファレンスを現地で取材するなど、グローバルな視点からクリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまでWIRED.jp、Real Sound、オリコンなどオンラインメディアや経済メディアでアーティストや経営者、起業家のインタビューや業界動向の寄稿記事を手がける他、サービスや市場データに関するコンサルティングや講演も行う。
https://jaykogami.com
https://twitter.com/jaykogami
https://facebook.com/jaykogami

世界中のレコードを、その手の中に
  • Google Playでアプリをダウンロード
  • App Storeからアプリをダウンロード

関連記事


新着記事

すべての記事をdig!